プロフィール

はじめまして

長谷川雄一版画空間館長の島村和子です。
私共夫婦の長年の夢でありました長谷川さんの版画を常設してある
ささやかな空間を開設することが出来ました。
長谷川さんが夫(勝巳)の会津若松時代の小学校時代の同級生であり、
版画家を目指していることは承知しておりましたが、最初に長谷川さん
の版画に出会った時の衝撃は今でも私の心の中に深く鮮明に残って
おります。それは昭和50年頃の高島屋の展覧会のことでした。
雪深い会津の静謐さ、無限に広がる宇宙、眺めているだけで癒される、
など、長谷川ワールドの虜になってしまいました。
そしてこれらの作品の魅力を多くの人に知って欲しいという思いが強く
なり、このたび、版画館を開くことになりました。
千葉外房線大網駅前のマンションの一室ですが素晴らしい絵と我々夫婦
の心を込めた「おもてなし」でホッとした長谷川雄一の世界を堪能
出来るものと確信いたします。
是非機会をつくってご高覧いただきたくご案内申し上げます。

「長谷川さんと私」

学芸委員見習いの島村勝巳です。
私は父親の仕事の関係で小学校時代を会津若松で過ごしました。
その時の友人が長谷川さんです。小学校時代の長谷川さんはおとなしく、
少し引っ込み思案で茫洋とした少年だった様に記憶しています。
中学校は別になったこともあり、少しずつ疎遠になっていきました。
私が勤め始めて何年かたった暮れ、同じ小学校の東京に就職した友人に
正月休みで若松に帰省するので一緒に行かないかと誘われ、久しぶりに
若松を訪れました。
懐かしさもあり、長谷川さんの馬場町の実家を訪ねてみると、長谷川さん
は留守でしたが、お母さんから「雄一は今、版画家を目指して勤めながら
朝早くと夜遅くまで制作活動をしている」「斎藤清先生、トールマンさん
にお世話になり、近日中に東京の高島屋で展覧会をする」
と知らされました。
その後、展覧会の案内をいただき、和子が観に行き、大感激をして帰って
きました。それ以降和子はすっかり長谷川さんの版画に魅了され、少し
ずつ買い集めるようになりました。
私も和子もただただ長谷川さんの版画が好きなだけで「勝手連」のような
ものです。自分がいいと思うとできるだけ多くの人に観てほしいと自分
勝手に思いがちです。長谷川さんに贔屓の引き倒しにならないように気を
つけなければと思います。
これを機会に私が軽いノリで「長谷川雄一版画の研究者になりたい」と
絵画に造詣の深い大先輩に話したら、そんなに簡単なものではなく、いい
絵をたくさん見なければだめだと諭されました。
これからこのホームページで研究成果を発表していきたいと思います。
私は長谷川さんが版画家になる過程で大きな影響を受けた人は多分、斎藤
清先生、ザ トールマンコレクション東京のトールマンさんとそして彼の
お母さんフクさんの3人だと思います。
今回は1989年9月トールマンさんが長谷川さんと斎藤清先生について
興味深い記述をしているのでそれを引用します。


引用文(長谷川雄一による木版)
私たちが25年前に買った最初期の日本の版画は、私たちが芸術家としてかねてより長い間尊敬していた斎藤清による木版画でした。
その斎藤先生が会津若松から電話をかけてくださり、その個性と美しさを長く賞賛していた長谷川雄一さんの作品を、私たちに是非みていただきたい、とおっしゃいました。私たちは、長谷川さんに会うため会津のアトリエを訪れました。それは大変印象的な出会いとなり、それが今回私たちのところで作品をお見せすることになったいきさつです。
彼の版画テクニックはまったくもって彼独自のものです。大抵の版画家はそれぞれの色ごとに一版ずつ版木を用いて彫りますが、長谷川さんは版木一枚だけを彫って多色木版画を制作します。彫り進めながら摺っていくために、前の段階の版木の状態には後戻りすることはできません。摺る枚数はとても少なく。およそ20枚ほど。柔らかい手漉きの和紙の裏面にバレンの圧力に耐えるように柿渋をひいて補強しています。もともと長谷川家は漆器制作にかかわってきたため、彼の作品には油絵の具の光沢があって、輝く家具や漆器の芸術性を思い起こさせるものがあります。作家のコメントとして、彼は長い期間、禅の深い精神性に影響を受けてきたと言います。「自然の中に見出すことができる創造の、さまざまな形に沿って仏教の曼荼羅のようにアレンジされた宇宙の莫大な時間と空間が自分のテーマでした。全般的な長い人間の歴史を見つめなおすことで、現代において自分が提示できる個人的貢献を発見するために手探りしているところであり、深い内心の精神性をもって創造しようと努力しています。」

長谷川雄一は1945年に福島県会津若松市に生まれ、良き助言者、斎藤清の影響のもと1970年に版画をはじめている。
1989年9月
ザ・トールマンコレクション東京
ノーマン、メリー・トールマン